新しい人の情熱を信じている。
新成人おめでとう。
今日から大人だと言われても、そんなはずはないと、君は思うだろう。
私の時もそうだった。
大人って何だろうか?
それを考える前に、
今年の新成人の君たちがいつもの年と少し違っていることを話しておこう。
それは、君たちがコロナの中で新成人を迎えたことだ。
いや大変だよね。手洗い、うがい、マスク着用、大声を出さない・・・。
コロナの対処法があり、ルールが生まれた。
君たちはよくルールを守り、今も黙々と戦っている。
なぜ自分たちだけが、なぜこんな時代に、と愚痴も言わず、嘆きもしない。
世界が君たちに感心している。私も君たちを誇りに思う。よく踏ん張ってるね。
さまざまな感染症が人類を襲って千五百年が過ぎたが、
私たちは一度も彼等に敗れていない。
なぜ敗れなかったか?
それは、私たちの祖先がひたむきに耐え、考え、知恵を出し、
脳漿(のうしょう)をしぼり、懸命にベストを尽くしたからだ。
そして何より、明るい未来が待っていることを信じたからだと思う。
君たちにはそれらを実行するパッション、
情熱が胸の中に受け継がれているんだ。
そんなに頑張っている君たちに今年もまた同じ言葉を贈ります。
生きる道が目の前にあり、それが登り道と下り坂なら、登り道を選びなさい。
むかい風と追い風ならむかい風に立ちなさい。
困っている人に、手を差しのべる勇気を持とう。
今は、少し辛いが、必ず笑える日はやってくる。まぶしい光が差す時が来る。
それを信じて歩き続けよう。
自分だけのためではなく、誰かのために
それが人間の品性だ。品格だ。
コロナの中の新成人諸君、情熱を信じて胸を張れ、
今は少し辛いが、二十歳は乾杯ができる。
君の顔に差すまぶしい夕陽に汗を拭って乾杯しようじゃないか。
君たちの情熱に乾杯。
伊集院静
2000年から毎年、成人の日に掲載される
サントリーの新聞広告
とうに二十歳を超えている自分ですが
毎年、自分に置き換えて心に留めています。
Shinji Omiya.